母音の音が聞こえなくなる?
「やきいも」の「き」を伸ばして「やきーいも」と言うと「ki」の「i」がしっかりと聞こえ、「i」の音が伸びていることが分かります。
では、「やきとり」の「き」を伸ばして「やきーとり」と言ってみてください。先の「やきーいも」の「ki」の「i」の音とは違うことに気付くことができたでしょうか。
なお、これは東京方言の場合に起こりやすい現象とのことですので、お住まいになっている地域によっては無声化が起きないことも考えられます。無声化が起こらない地域の方は,そういうことが起きているのかと俯瞰した気持ちでご覧ください。
「やきーとり」の「ki」の「i」は母音の「i」の発声とはならずに、息がただ漏れているような音になっていると思います。
この「やきーとり」の「ki」の「i」のように、母音であるのに母音の発声とはならずに無声音してしまうことを「母音の無声化」といいます。
この母音の無声化が起こる条件とはどのようなものなのでしょうか。
無声化は、狭母音(舌と上顎の間が狭い状態で発声する母音)の[i]と[ɯ](ɯ:非円唇の「う」)が関わっています。この[i]と[ɯ]が含まれる「い」段と「う」段の「カサタハパ行」や「シュ」の文字が語中や語末にあることが前提となります。詳しく言えば、「キ、ク、シ、ス、チ、ツ、ヒ、フ、ピ、プ、シュ」のそれぞれの子音と組んでいる[i]と[ɯ]が無声化とすることになります。
(「キ、ク、シ、ス、チ、ツ、ヒ、フ、ピ、プ、シュ」はカサタハパ行のイ段とウ段)
では、どのようなときに無声化されるのでしょうか。
その条件は「キ、ク、シ、ス、チ、ツ、ヒ、フ、ピ、プ、シュ」の次の文字が「カサタハパ行の文字」のとき、あるいは、「キ、ク、シ、ス、チ、ツ、ヒ、フ、ピ、プ、シュ」の文字が語末となっているときです。
「キ、ク、シ、ス、チ、ツ、ヒ、フ、ピ、プ、シュ」は覚えなくても思い出しそうですが、大切なのは母音の無声化と関連付けて覚えることです。そこで、無声化と関連付けて以下のように覚えてみてはどうでしょうか。これは、イ段、ウ段のカサタハパ行なので、すぐに思い出せる人は覚えなくても大丈夫ですね。
「むせ」か?ピチピチヒップ祝福し、キス
無声化「ピ」「チ」「ヒ」「ツ」「プ」「シュ」「ク」「フ」「シ」「キ」「ス」
「むせている」のは、ピチピチのヒップを祝福しようとしてキスをしたからなのか?
では、上の「やきいも」と「やきとり」で確かめてみましょう。
まず、どちらも母音が無声化される文字である「キ、ク、シ、ス、チ、ツ、ヒ、フ、ピ、プ、シュ」の「き」が語中にあることが分かります。
次に、「き」の次の文字がカサタハパ行の文字かどうかについて確認します。「やきいも」の「き」は次の文字が「い」なので「カサタハパ行の文字」には該当しません。「やきとり」の「き」の次の文字の「と」は「カサタハパ行の文字」に該当しています。条件に見事に当てはまっています。
念のため、語末が「キ、ク、シ、ス、チ、ツ、ヒ、フ、ピ、プ、シュ」の場合も母音の無声化が起こるか確かめてみます。
「たいやき」の「き」に気を付けて言ってみます。私の発音では、「き」を意識したときは「i」の母音を発声しましたが、早口で言った場合「ki」の「i」が無声化されていました。
「マッチ」の「chi」の「i」の母音は無声化されていました。
問題に挑戦
仲間はずれを探します。目標タイムは50秒以内です。今できなくても問題ありません。検定試験までにクリアできるようになればいいのです。
【母音の無声化】
1 ハンカチ 2 タツノコ 3 おつかい 4 こくどう 5 しんぶん
解き方
①「キクシスチツヒフピプシュ」の文字が語中にあることを確認
②「キクシスチツヒフピプシュ」の次の文字が「カサタハパ行の文字」か、あるいは、「キクシスチツヒフピプシュ」の文字が語末かどうかの確認
どうでしたか。正解は5だけ仲間はずれとなり、「しんぶん」の「shi」の[i]は無声化されません。
ルールを適合させて仲間はずれを見付けることが制限時間内に行えるように練習してみてください。