「埠頭を渡る風」解説編⑳ 「何も聞かずに」の謎

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何も言わずに… 何も聞かずに… 晴海〔はるみ〕が要求した理由は何か

なぜ、「何も言わずに」、「何も聞かずに」と晴海〔はるみ〕が風優哉〔ふうや〕に要求するのでしょうか。

それは、「言ってほしくない言葉、聞いてほしくない言葉があるからではないか」と考えてみました。

だとすれば、一番最初の「何も言わずに」は何を言われたくないのでしょうか

 このときの場面は、風優哉〔ふうや〕が好きだった美帆〔みほ〕に彼氏ができ、気落ちしていているような状態です。そのとき、晴海〔はるみ〕が一番言われたくない言葉、一番傷付く言葉は何なのか。それは、「やっぱり美帆〔みほ〕のことが好きなんだ」といった類いの言葉ではないでしょうか。晴海〔はるみ〕は自分に風優哉〔ふうや〕の気持ちが向いていないのは知ってはいたけれども、口に出して言われてしまえば、突き放されたような深い悲しみを抱くと思います。

では、次に出てくる「何も聞かずに」は風優哉(ふうや)に何を聞かれたくないのでしょうか。これは悩みました。

この物語の状況を時系列で見てみると以下のようになります。

・晴海〔はるみ〕は風優哉〔ふうや〕の気持ちを知っている上で、風優哉〔ふうや〕に接していた
・風優哉〔ふうや〕は、晴海〔はるみ〕を傷づけていたことに気付く
・晴海〔はるみ〕は風優哉(ふうや)が私のことで自分を責めていると気付く
・風優哉〔ふうや〕の迷いがなくなる 晴海〔はるみ〕が風優哉〔ふうや〕に倒れかかる

 いろいろと候補を挙げ、そのときの風優哉〔ふうや〕の気持ちを考えてみました。

 「俺ってダメなやつだよね?」

   自分を卑下することで罪を軽くしようとか、同情を誘おうとするような魂胆が見え隠れしそうです

「怒っているよね?」…

   倒れ掛かってきた行為に対して安堵した上で、自分のした行為を正当化しようと予防線を張るような言い方です

「傷づけていたよね?」……

 事実の確認を求めていますが、晴海〔はるみ〕にとっては答えにくい問いかけとなります。確認しないと謝罪できないくらい思いやりもない鈍感な人なのかと感じさせてしまいます。

「まだ、好きでいてくれる?」……

 傷付けた行為は棚上げにして、自分の都合だけを優先するような言い方です

「許してくれるの?」

 晴海〔はるみ〕の行為にあぐらをかいて、甘えているように感じられます。

いろいろと考えて出した「風優哉〔ふうや〕にしてほしくない問い掛け」の結論は、
「どうしてそんなにやさしいの?」でした。

 晴海〔はるみ〕を客観視して、風優哉〔ふうや〕が自分を責め始めるきっかけとなりそうなフレーズだと思いませんか。きっと、晴海〔はるみ〕は風優哉〔ふうや〕が自分を責め始めてしまうことを恐れ、何も聞かないでほしいと思ったと捉えました。

 

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