「埠頭を渡る風」解説編④ もう一人の登場人物

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もう一人の登場人物がいたとは

 気合いを入れて聴き出してから1年以上経ち、あるとき急に、晴海〔はるみ〕には女友達がいるという思いが、稲妻のように降りてきました。もちろん、歌詞の中には一言も出てきません 歌詞の登場人物は晴海〔はるみ〕と「あなた」だけです。でも、その女友達が存在しなければ、この歌詞が成り立たないと確信に近いものを感じました。

 その前まで、歌詞の「一人傷付き」という言葉がずっと引っかかっていました。二人は夜に車に乗って出掛けるくらいの仲なのに、なぜ風優哉〔ふうや〕一人だけ傷付いたのだろう。そのことをずっと疑問に思っていたのでした。

 地方に赴任し、仕事で失敗したのだろうか。いじめに遭ったのだろうか。晴海〔はるみ〕とけんかして一方的に打ちのめされたのだろうか。遠距離恋愛で疎遠になり別の人との恋に破れたのだろうか・・・などなど、いろいろと当てはめては打ち消す作業を続けていました。

 でも、どれも後に出てくる歌詞の内容としっくりくるものがありませんでした。そこで、自分だったらどんなときに一人傷付くだろうかと考えてみることにしました。
 

 考え初めてから2か月も時が過ぎていました。そして、あるとき

 「好意を持っている女性に彼氏がいたと分かったときに傷付くのではないだろうか」と思いつきました。でも、歌詞には晴海〔はるみ〕に別の彼氏がいたような様子は書かれていません。とすれば、風優哉〔ふうや〕には、晴海〔はるみ〕の他に好きな人がいたのではと閃きました。

 そして、今は晴海〔はるみ〕と付き合っているけれども、風優哉〔ふうや〕にはずっと気になっている女性がいて、その女性に彼氏がいたことを知ってしまったから、「一人だけ」傷付いたのではないかという推測に至りました。しかも、それは晴海〔はるみ〕の女友達。これで、解明に少し近づけた気がしました。

 「皆まで言わないこと」を念頭に置き、明示せずに晴海〔はるみ〕とは別の好きな女性の存在を歌詞の中に絶妙にちりばめ、織り込んだ松任谷由実さん。

 その表現力は本当に天才的であり、ずば抜けており、言葉の魔法使いであると驚嘆させられます。

 

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