「埠頭を渡る風」解説編⑤ 解釈における意味論と語用論

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どちらが欠けても(意味論と語用論)

 会話を解釈するには、意味論的な解釈と語用論的な解釈の両方が必要です。意味論的な解釈とは、文脈や状況を考慮せず、会話を文字からの情報だけで会話の意味を文法的に解釈することを指します。

 これと異なるのか語用論的な解釈です。語用とは文脈や状況を考慮した上で、会話の意味を解釈しようとするものです。これはその場の空気を読んで会話を解釈すると言えば分かりやすいかもしれません。

 例えば

このボールペン使っていい?  

どうぞ  

 二人の会話を意味論的に考えれば、一方がボールペンの使用許可を求め、ボールペンの持ち主が使用の許可を与えたという意味になります。

 しかし、二人がけんかをしているときだったら、意味は同じになるでしょうか。おそるおそるだったり、威圧的な態度だったり、わざと丁寧過ぎたりするような口調になることも十分考えられます。「どうぞ」の言葉には「あなたになんか本当は使わせたくない」といった意味も含まれることも推測できます。このように文脈や状況を考慮して会話の意味を解釈しようとするのが語用論的な解釈です。

 今、振り返ると、この「埠頭を渡る風」は、意味論、語用論のどちらが掛けても解釈することができなかったと感じています。

 

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