「恩返し」と「恩送り」 

 令和6年度能登半島地震は1月に政府によって「激甚災害」「特定非常災害」に指定されました。被災された皆様、避難所生活を強いられている皆様、大変なご苦労されていることとお察し申し上げます。また、大切なご家族を失ってしまった皆様におかれましては、今は生きる灯火が見いだせず、悲しく苦しい状況が続いていることと思います。どうかどうか、暗闇の茨の中でも人生の灯火を見いだすことを諦めず、亡くなられたご家族のためにも、生き抜くことの意義をなんとか見いだし、生き続けてください。そして、時間薬の助けを借りながら、いつの日かしっかりと前を向いて歩むことが成し遂げられることを心から願っています。募金ぐらいしかできない不甲斐ない自分ではありますが、被災された皆様の心と生活環境の復興が一日でも早く訪れることを願っています。そして、支援や復興に携わっておられる行政、医療、カウンセラー,警察、消防、自衛隊、教育、ライフラインの復旧、建築、様々な各関係機関、ボランティアの皆様などの皆様も、遂行すること、全うすることばかり念頭においていては、体調を崩されてしまいます。どうかどうかお体にも気を付けて任務や支援にお励みいただくことを願っています。

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「恩返し」という言葉について考える

 最近、テレビのニュース番組で「恩返し」という言葉をよく聞きます。「震災のときに支えてもらった恩返しのために行きます」、「たくさんの救援物資を届けてもらった恩返しの意味で支援しに行きます」、「ボランティアの方々に助けてもらった恩返しのつもりで」等、今度は私たちが助けなければならないと語っています。

 この「恩返し」という行為自体はとても尊いことです。しかしながら、この言葉に含まれる裏の意味を考えたとき、この言葉を使ってしまうと少し損をしてしまうのではないかと心配しています。

 それはなぜなのかと言うと、「恩返し」は「義」の心、別の言葉で言えば「義理」によってなされる行為だからです。葬儀の香典で考えれば、「あのとき香典をいただいていたので、今はあまり付き合いがないけど香典を包むか。」というように、「気は進まないが義理があるからなあ。」という気持ちで支援をやりとりする(もちろん、そのようなお考えの方々はいないということは重々承知しております)ようにも受け取られてしまいます。また、「恩返し」という言葉の裏を返せば「恩を受けたから支援するのであって、恩を受けてなければ支援する必要はない」という負の意味も見え隠れしてしまいます。やはり「恩返し」という言葉を使うのは注意を要すると思うのです。

 そこで、この「恩返し」の言い換えの言葉があるか調べてみました。すると、江戸時代から「恩返し」と同一の意味で「恩送り」という言葉を使っていたことが分かりました。
 【出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』】。
 そして、小説家・劇作家の井上ひさし氏が、今まで「恩返し」と同一の意味として使われていた「恩送り」を、「誰かから受けた恩を、別の人に送り、その送られた人はまた別の人に送るように「恩」がぐるぐる回ってゆくこと」と捉え直して意味付けしたとのことです。「情けは人のためならず」ということわざがありますが、きっと、井上ひさし氏もこのことわざの意味することを深く実感していたからこそ、「恩送り」という言葉に新たな意味付けをされたのではと思いました。

 この「恩」がぐるぐる回る意味で「恩送り」という言葉を使うならば、「義理」で動くといった意味合いは薄まります。別の人に恩を送るということからも、自発的な思いやりの気持ちの意味合いも加わってくるような気がしてきます。「日本中に「恩」がいっぱい回るように「恩送り」に行ってくる」とたくさんの人が唱えたら、どんどん明るい未来がやってきて温かい気持ちになれるのでは、と思っています。

 

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