日本語の動詞グループの弁別

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日本の動詞のグループはいくつ?

 中学校の国語で習う動詞の分類では、5種類あると教わります。五段活用、上一段活用、下一段活用、カ行変格活用、サ行変格活用の5種類です。
 ところが、日本語教育では動詞を5種類ではなく、3種類のグループに分けて教えます。Ⅰグループ、Ⅱグループ,Ⅲグループです。この分類について、Ⅰ年目、赤本を読んだだけの勉強では、分類する意義を全く理解できていませんでした。なぜ分類する必要があるのか、どうしてこれを覚えなければならないのか、もやもやしたまま覚えようとしていました。
 しかし、2年目は日本語を母語としない人に教えるために、理解しやすいように分類しているのだということが、ようやく分かりました。中学校で習う動詞の分類は、日本語を母語としている人のための分類で、日本語を分析するために使うものです。日本語を母語としない人は、日本語を使えるようになりたいと思っているのです。使う上で役立つ方がためになります。

 では、日本語教育の動詞はどのように分類されているのでしょうか。それは、中学校で習った動詞の未然形を見ると分かります。動詞に「ない」を付けてみるのです。
 

Ⅰグループの動詞は、「ない」を付けると、「ない」の前の字のローマ字表記が「aない」となります。
例えば、書きます→「書かない」(かkaない)、読みます→「読まない」(よmaない)、行きます→「行かない」(いkaない)、買います→「買わない」(かwaない)などです。

Ⅱグループの動詞は、「ない」を付けると「ない」の前の字のローマ字表記が「iない」「eない」となります。
例えば、見ます→「見ない」(miない)、食べます→「食べない」(たbeない)などです。

最後のⅢグループの2つだけの動詞は不規則動詞なので、覚えます。
来ます→「来ない」、します→「しない」

 実はお気付きだと思いますが、Ⅰグループは五段活用のグループ、Ⅱグループは上・下一段活用のグループです。そして、Ⅲグループがカ行・サ行変格活用なのです。また、「見る」、「食べる」終止形で表記していないことを不思議に思う方もいると思います。
 それは学習する順番が関わっています。理解しやすいように学んでいくため、終止形(辞書形)が出てくるのは割と後の方になってからとなります。初めに習うのはマス形という上記のような形なのです。

 日本語教育で、3つのグループに分類する理由は、難関指導事項である「テ形」を理解してもらいやすくするためだと講座の先生方に聞きました。「テ形」とは何かと言えば、「見て」、「食べて」、「来て」、「して」、「書いて」、「読んで」、「行って」、「買って」などの、動作やことがらが続けて起こることや、手段、原因、並列などを表すときに使う形です。

 では「テ形」を日本語を母語としない人に教えるには、Ⅰ・Ⅱ・Ⅲのどのグループから教えればいいでしょうか。講座の講師の先生は、全員とも「Ⅱから教える」と話していました。そして、全員がⅡ→Ⅲ→Ⅰの順序で教えるのが最も分かりやすいともいっていました。

 それはなぜなのか、確かめてみます。Ⅱグループの例は「見ます」、「食べます」です。
 さて,この「見ます」、「食べます」をテ形にすると「見て」、「食べて」です。これは、「ます」が「て」に変わっただけということが分かると思います。実は、Ⅱグループは変換のルールが最も簡単なグループになっているのです。

 次のⅢグループの「来ます」「します」はⅡグループと同じルールが適用でき、「来て」、「して」と変換することができます。

 問題はⅠグループです。テ形にするには、まずⅠグループの動詞を更に4つに分類しなくてはなりません。
 なぜ、4つに分類するのでしょうか。それは、日本語母語話者は「て」の前の文字を音便(おんびん)(発便利になるよう変化させる)させて話しているからです。その音便として変化させるルールが4つあるのです。
 

 では、確かめてみましょう。動詞に「ます」を付けたマス形の「ます」の前の文字を見ます。その平仮名を分類すると、「き・ぎ」、「び、み」、「い、ち、り」、「し」の4つのグループとなります。そして、それがそれぞれ、音便のため、「き・ぎ」→「いて、いで」、「び、み」→「んで」、「い、ち、り」→「って」、「し」→「して」となります。例えば、書きます→書いて、読みます→読んで、買います→買って、出します→出して、となります。
 

 日本語を母語としない人にとっては、相当高いハードルであり、なかなか身に付きにくいことが想像できると思います。


 このため、外国の人にこのテ形を教える際には、雪山賛歌のメロディーなどに合わせて覚えることも行われているようです。例「いちり」って、「みび」んで、「き」いて、「ぎ」いて、「し」して。繰り返し 

 

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