和語の意味範囲の広さ

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意味範囲が広い和語

 言語を分類する観点を表す際に「語種」という言葉が使われることがあります。語種とは「どこの出身となる言葉なのか」という観点から言葉を分類することを指します。
 日本語の語種を考える場合、まず固有語借用語に分類されます。さらに、借用語外来語漢語と分類されます。

 まず、日本語の固有語ですが、これは和語大和言葉)のことを指します。「やま、たに、うみ、はな、うつくしい」など、日本で古くから話されていた言葉が和語となります。

 そして、借用語である外来語ですが、カタカナ表記されているものの多くが外来語です。しかし、古い時代に入ってきた外来語の場合、漢語の漢字が当てられているものもあり、外国から入ったとは気付きにくいような言葉もあります。例を挙げるならば「瓦、合羽、袢纏、煙草、天麩羅」などです。この他にも「アジア、ボランティア、レクリエーション、レシピ」などといったカタカナ表記のものも外来語となっています。

 もう一つの借用語である漢語ですが、これはよく考えれると外来語に当てはまるような気もします。ご承知のとおり、漢語は外国である大陸から伝わってきたものです。しかしながら、日本に初めて伝来した文字ということなので、漢語と分類されています。漢語伝来以前は書き残す文字というものが日本に存在していなかったようです。
 漢語は普段の会話でそれを使わずにはいられないほど日常に溶け込んでいる言語です。たとえば、「国民、家族、学生、科学、機会」といった漢字と漢字の組み合わせてできている言葉の多くが漢語となっています。漢語があるおかげで、私たちは言葉の意味をある程度推測することができます。
 しかし、漢字を使用していない国から来た人からすると、ひらがな、カタカナ、漢字の3種類も覚えなくてはならないため、日本語の学習は大変だと感じるようです。

 この他にも、和語と外来語、漢語が結びついた、「赤ペン」,「餡パン」「工場(こうば)(※場(ば)は和語)、番組(※組は和語)、見本(※見るは和語)」などといった混種語もあります。有名な重箱読み、湯桶(ゆとう)読みも混成語になります。ちなみに、(じゅう)の音読み(大陸の読み方)と(はこ)の訓読み(和語の読み方)という「音・訓の順番の組合わせ」を重箱読みといい、(ゆ)の訓読み(とう)の音読みという「訓・音の順番の組合わせ」が湯桶読みとなります。
 さて、固有語である和語についてですが、和語は一語が表す意味範囲がとても広くなるのが特徴です。
 例えば「甘い」という言葉を考えてみます。「甘い」を使った表現がたくさん挙げることができます。
 

甘味:砂糖は甘い
塩味の不十分さ:塩味不足で甘い
口当たりの穏やかさ:甘い日本酒だ
程度の緩さ:しつけが甘い、ネジの締め付けが甘い、詰めが甘い、意識が甘い
基準の緩さ:レポートの採点が甘い
欲を充足させるような:甘い誘惑
うらやむ境遇・状況となる:甘い汁
心地よい:甘い歌声
仲がよく幸せな様子:甘い生活

 味覚についてだけでなく、いろいろな状況でも「甘い」という言葉が使われています。

 日本語が難しいと言われる理由の代表は「テ形」、「尊敬語・謙譲語」です。でも、それだけでなく、和語の意味範囲の広さも関係があるような気がしています。

 

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