アクセントの問題 JEESのJLTCT 試験Ⅱの対策

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アクセントのリスニング問題は難しい?

 普段、日常の会話をしているときは意識しませんが、私たちは会話の中で音程(ピッチ)を変えて話をしています。日本語は英語のような強弱を付けるストレスアクセントではなく、音程を変えるピッチアクセントです。

 この音程(ピッチ)ですが、住んでいる地域が違えば、音程や、音程の起伏の大きさも違ってきます。共通語と東北地域、関西地域では話すイントネーションが違うことは皆さんもお分かりだと思います。このイントネーションとは文全体の声の高低(ピッチ)のことを指します。ピッチアクセントは文の語句の高低(ピッチ)のことを表します。

 ちなみに、共通語と書きましたが、よく言われている標準語とは異なります。標準語は、国が法律で「この言語を使用する」と定めた言語のことを指します。日本には標準語を定めた法律はありません。そのため、日本では共通語と書くことが適切な表現ということになります。

 コーヒーという語を例に挙げてみます。共通語の音程(ピッチ)は、おおよそ「コー」の音が「ド、レ」で「ヒー」が「レ、ラ」となるような感じだと思います。つまり、音程を「高」「低」で表せば、低高高低となります。ところが、東北地域に行くと、コーヒーの音程は「コー」が「ドレ」で、「ヒー」が「ラー」という音程に聞き取れます。音程を「高」「低」で表せば低高低低となります。「コーヒー」では音程(ピッチ)が一つ違うだけですが、共通語を話している人も違う地域に住んでいる人も互いにその言葉を聞けば、自分の住んでいる地域の者ではないと認識することができるほど私たちの耳は敏感なのです。
 しかし、聞いたときに違いがあるということは分かるけれども、どこがどのように違うのかということは説明できるという人は少ないと思います。そのあまり意識していないアクセントの高低について、日本語教育能力検定試験では出題されます。しかも、試験Ⅱの40問中6問もです。

 この音程はフリーのアンドロイドスマホアプリ,「ボーカル音程モニター」で計測しました。しかしながら、実測してみると、1音発声している間においても、音程が下降していることが分かりました。音程を把握することは容易ではありません。そもそも、会話での音程とは相対的なものです。絶対的な音程ではありません。また、男性と女性での発声領域の高低の違いなどもあります。音程として書き表すことはなかなか難しいということをご理解願います。

 会話の中で「雨」と「飴」や、「柿」と「牡蠣」、「橋」と「箸」という言葉が出てきても、私たちはピッチアクセントの違いでどちらの語のことを指しているのか判別することができます。これをアクセントの弁別機能といいます。もちろん、会話の内容や文脈といったことから判断する場合もありますが、共通語のアクセントでは、2文字の2音の音程(ピッチ)がそれぞれ違うため、これら3組の単語を聞き分けることができます。
 なお、地域によっては、ピッチアクセントの違いがなかったり、あるいは、ピッチが反対だったりするようなところもあるかもしれませんので、一応目安のために私の音程を計測したものを載せておきます。

 私の「雨」の音程は「あ」が「レ」で、「め」が「ラ」と下がります。高低表示で書けば、雨は高低となります。
 雨は上から下に降るのでピッチも高から低へと下がっていく感じです。

 反対に「飴」の音程は「あ」が「ラ」で、「め」が「レ」と低から高に上がります。高低表示では書くと、飴は低高となります。
 飴を舐めたので高い声が出るようになるようなイメージでしょうか。

 牡蠣と柿ではどうでしょうか。

 牡蠣の場合は「か」が「レ」で、「き」が「ラ」と高から低へと音程が下がります。牡蠣の高低表示は、高低となります。
 海の中にいる牡蠣を見るために視線を下に向けるように音程が下がります。

 柿の場合、「か」が「ラ」で、「き」が「レ」と低から高へと音程が上がります。柿の高低表示は、低高となります。
 木に実った柿を見上げるかのように音程が上がります。

 この2組の音程の違いをなぜ説明したかというと、これがリスニング問題対策の有効な武器になると思ったからです。

 日本語教育能力検定試験の試験Ⅱでは、リスニングの問題が出されます。そのアクセントに関する問題は、日本語を母語としない外国の学習者が発音した6~8文字の語句のピッチアクセントはどれが正しいかを、5つの選択肢から選ぶ問題です。

もしかしたら、絶対音感や相対音感を持っている人はたやすく解ける問題なのかもしれません。しかしながら、私は過去問4年分を何度繰り返して行っても、一向に正答率は向上しませんでした。何度もやって正答率が下がるときもありました。

しかも、外国の学習者が発音しているため、日本人の発音のように「1音目と2音目の音程は必ず変わる」という原則は通用しません。

令和4年度、令和3年度の試験Ⅱの問題を見ても、1音目と2音目が同じ高さとなっている選択肢が書かれています。しかも、6問中2問もです

試験Ⅱ問1の5番の選択肢
問1の5番の問題の選択肢
試験Ⅱの問1の6番の選択肢
問1の6番の問題の選択肢

 令和4年度の例だと、試験Ⅱの問題1の5番「アルイタトコロデ」という箇所のアクセントの高低を聞取るのですが、正答はcの「高高低高低低高低」の選択肢が正解でした。そして、6番は「カリラレナケレバ」という箇所を聞き取る問題でしたが、正答はaの「低低高低低高高低」の選択肢が正解となります。日本語のように、外国の学習者のアクセントは1音目と2音目の高低が必ず変わるという原則には当てはまりません。

 結局、暗礁に乗り上げ、正答率の上がる解き方を体得しないまま、本番に臨みました。ここの問題は運任せだとも思いました。
 幸い、ここは6問中3問当たり、なんとか他で稼ぐことができたので、事なきを得ました。

 試験に合格はしたものの、何かもっといい方法はなかったのか、なんとかこのもやもやした気持ちをすっきりさせたいといろいろ攻略方法を探しました。すると、あるとき、むきえび氏の「日本語教育ナビ」というサイトでリスニング問題の攻略法について紹介されていたのを見付けました。

 見るとなるほど、これは正答にたどり着くことができる方法だと思いました。この方法だと「雨」と「飴」、あるいは「柿」と「牡蠣」のピッチアクセントの違いが分かる人ならば、答えを導き出すことができます。もっと前に知りたかったと悔しくなってしまいました。

 攻略法を簡単に説明すると、
 ① 聞き取る6~8文字の箇所は複合語なので2つに分ける
  ※ 「アルイタトコロデ」であれば「アルイタ」と「トコロデ」の2つに分ける 
 ② 2つに分けた箇所で、選択肢の高低に違いが出ているところを探す(通常は頭の2音)
  ※ 「アルイタ」では「イタ」のところ、「トコロデ」は「トコ」の箇所
 ③ 音声は2回流れるので、1回目は「イタ」が、「飴」や「柿」の低高アクセントになっているか聞く
 ④ 2回目は「トコ」が「飴、柿」なのか「雨、牡蠣」なのか、どちらでもないのか聞き分ける
 ⑤ ③と④の結果から正答の選択肢を選ぶ
 となります。

 検定試験を受検される皆様が私のように悔しい思いをしないようにという思いを込めて、紹介させていただきました。

 

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