海風が吹く時刻について
この物語の季節はいつかと言えば、「白い吐息」、「凍える」と描写されていることから、冬季ということが分かります。冬季の月夜に、小高い見晴らしのよい高台から埠頭へ出掛け、埠頭で海風に吹かれ、また戻っていくまでの物語です。ぺいは、この物語は「海風が重要なファクターになっている」と捉えました。
しかしながら、ここである疑問が生じます。それは、「海風は、冬季に、しかも夜でも吹くのか」ということです。そこで、いろいろと検索したところ、以下の論文を見付けることができました。
土田 誠 氏・吉門 洋 氏による論文「東京に湾岸の冬季の海風」(1995.5)https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/1995/1995_05_0283.pdf
こちらの論文には、南東から吹いてくる風を海風として、冬季2年間の180日を調査した結果、東京湾に海風が41日間吹いたと書かれています。これを、1年間に直すと、冬季90日の中で20日ほど海風が吹いたという計算になります。そして、両氏の論文には、海風が1日のいつごろ吹き終わるかについての時刻と回数がグラフで表されていました。そのグラフによると2年間の冬季に海風が吹いた41日の中で、22時まで海風が吹いた日が4日間、21時まで吹いていたのが2日間、20時までが8日間(最も多かったのは17時まで12日間)、と表されています。
【解説編⑥「青い」が語っている深い意味】の解釈の欄で述べたとおり、冬季の日の暮れは早いため、満月時は月の出の時刻も早まります。満月であれば16:30頃に月の出を迎えることもあります。
満月翌夜の十六夜月でも、17時を少し過ぎた頃には月の出となることもあります。十六夜月が完全に顔を出し、散乱光で空が青く見えるようになるまでを考えても、18:30頃となります。そこから埠頭までの移動し、倉庫の陰にたたずむ時間を考えても、二人が海風に吹かれるという状況は、十分に真正性(実際に起こりえる)があることだと考えます。