青から白 そして、青へ
埠頭を渡る風には2つの色の名前が出てきます。「青いとばり」の青と「白い吐息」の白です。色が出てくるのは前半と後半に青が2回、そして、その途中に白が1回です。時系列で表せば、青→白→青の順となります。
前にも書きましたが、色にはイメージが付随しています。それゆえ、この2種類の色は松任谷由実さんが歌詞に偶然挿入したのではないと推測しています。つまり、「色の持っているイメージを考慮し、意図的に色を配置して、歌詞を暗示するという手法」で表現したと考えています。
冒頭一行目の「青い」は憂いや寂しさ、寂寥感といったイメージを暗示させ、歌詞に深みを持たせているいるように感じます。晴海〔はるみ〕の心情を青い色に例えて表現しているとも言えます。
では「白い吐息」の白とはどのようなイメージを暗示させていたのでしょうか。ぺいが考えた白のイメージは「浄化」でした。初めに思い付いたのが、純白という言葉です。この言葉には「けがれのないもの」「真っさら」「純真無垢」というイメージが付随しています。そこから、白い息を吐き出す風優哉〔ふうや〕が「けがれのないもの」になっていくのではと発想しました。この「白い吐息」は、「闇」という言葉も相まって、一層白さが際立つような気がします。白と黒のコントラストとも言えます。そして、その「白い吐息(といき)」は闇の中に消えていきます。吐息は落胆したときに感情的になって息を吐いてしまうことです。そのため、この物語での「白い吐息」とは、けがれのない真っさらな状態になろうとして吐き出した後悔や自分の非という気持ちを表しているように思えました。そして、その気持ちを海風が闇に消していくことで、風優哉〔ふうや〕は真っさらな状態へとなっていったのだと推察しました。
そこから、この物語の白のイメージを「浄化」に結びつけたのです。そう考えると、歌詞との整合もピッタリだと感じました。
後半の「青い」の色のイメージはどのようなものでしょうか。【解説編⑩ 風優哉〔ふうや〕を変えた出来事】で述べたように、晴海〔はるみ〕の前半はマイナスの感情で後半はプラスの感情に変わっています。そこから、夜のとばりであることと前後の歌詞との整合を考慮すれば、爽やかさや清潔感というよりは、清涼感、誠実、広大といったイメージが浮かびました。
3年近く「埠頭を渡る風」の解釈を続けていく過程で、松任谷由実さんは色の効果も十分考慮されてこの歌詞を書かれている、という確信を深めました。